シンECについて

コロナ発生でECになにが起きたのか?

ECマーケット成長曲線

2020年に突如発生したコロナ禍によりECは一気に数年分進み、一部商材を覗き大小問わず多くのECショップが売上を伸ばすことが出来ました。しかし、アフターコロナでECは一気に淘汰の時代に様変わりしました。

コロナ禍で売上を伸ばした上位店は本格的に力を付け商店から企業へと変貌、小規模でもコンセプトのしっかり立っているショップは十分な顧客を獲得し基礎を築きました。一方でこれら以外の普通の販売をしていた多くの事業者は苦戦や撤退を余儀なくされてしまう流れが急速に広がっていると感じています。

これまではモール特性に応じた必ずしも本質的とは言えない工夫や裏技的なもの、具体的にはEC支援企業から提供されるノウハウや最新情報、ツールなどで競争力の一部を補うことができていました。

しかし、この後説明しますがECが社会インフラ化したことでジャンルNo1の強者と独自性の高いコンセプトショップしか生き残れない時代となりつつあります。これは中小個人の事業者にとっては非常に厳しい現実となっています。

大きくピボット(事業転換)しコンセプトショップに生まれ変わるか、超特化したジャンルNo1(狭義ポジションを見つけてその中でオンリーワンとなる戦略)を目指すか、場合によっては計画的にソフトランディングで撤退する戦略も必要となりつつあると感じています。

EC全体の成長期は終わり成熟期になるとは?

ECは1997年に楽天市場がオープンしたあたりから10年掛けて認知を広げ拡大。2010年代にはスマートフォンの劇的な普及、モバイル通信の高速化などでネットショッピングも普及し市民権を獲得しました。そして2020年のコロナ発生により、ECは一部の人が好んで利用するものから一般的に利用すべきものとなり、コンビニエンスストアなどのような社会インフラの一部になりつつあると言えます。

一見してEC事業者にとっては喜ばしい進展にも思えますが、実情は少し違っているようです。

実は、コロナ発生でECが数年分前倒しで普及したというよりは一気に成長期が終わり成熟期を迎えてしまったというのが現実ではないでしょうか。売れないといった声や撤退する店舗が増えている印象が拭えません。

それでもECはまだ進化するという意見もあると思います。しかしECとは流通形態の総称でしかありませんので、新たな成長曲線が始まるようなECを超えたECといったものが出現してくる可能性は今のところ想定されません。

ECが成熟期に入ってしまったことのインパクトは必ずしも今日明日襲い掛かってくるものではないですが、全てのEC事業者が不可避であり重大事項として受け止めなければならないのが現実と言えます。

ECマーケット成長曲線

リアルビジネスと同じ道程をたどる

ECがコンビニと同じ社会インフラになるということは中小個人ショップにとってはビジネス環境が厳しいものとなる、言い換えると「競争ルールが変わる」(今までと同じ考え方、やり方が通じなくなっていく)と解釈することもできます。

かつての日用品、文具、寝具、金物であったり、惣菜のお店であったり、町の酒屋さんなどはほとんど姿を消し、コンビニエンスストアや都市部では24時間営業のスーパー、地方都市ではイオンなどの巨大モールに置き換えられています。よほど何かに特化し独自の価値を提供できるお店でなければ存在意義を出せません。

生き残りを賭けた新しい戦いの時代へ

同じくECにおいても、D2Cのような特化型でコンセプトの立っている顧客とのコミュニケーションを重視し利益率も高いショップや、ジャンルNo1の強者しか生き残れない時代に突入しています。

EC化率はまだ向上しそうですが大きく売上を伸ばすのは強者だけという構図(これまではおこぼれ的に分散していた売上は強者に集約されていく構図)になりつつあり、更に人口減は継続的で不可避な状況ですのでいずれ強者にとっても強者同士の競争に晒されたり、新しく強いプレーヤーの参入で強者であり続けることも簡単ではなくなっていくと予想されます。

もちろんこのような流れの中でもビジネス環境とは複雑で多様ですので上手にポジションをずらしたり、レッドオーシャンの中のブルーオーシャン(超特化)の発見など方策は多用にありえます。「どうすべきか?」ではなく「どうあるべきか?」という問いを立て直し、小手先のテクニックや最新情報のようなものに振り回されず、本質的な価値を提供する戦略思考、コンセプトメイクが重要です。

シンECの方向性

これまでの20年はECマーケット自体が新しいものであり、EC流通総額の成長拡大が後押しとなっていたため緩い余白が常に残っていましたが、EC全体が成熟し社会インフラ化した今後はそのような余白は確実に消滅していくはずです。日本中の商店街がシャッター街になっていった道程をECマーケットにおいても辿っていくのは必至でしょう。そこで生き残るには強い戦略と独自コンセプトが際立ってることが必要なはずです。

その上でなければ、ノウハウや裏技、DX、スキルやテクニック、最新情報、ツールといった「戦術」に相当する武器はなんの効力も発揮しません。むしろ振り回されデメリットでしかない場合もあるでしょう。これまでの20年はここを頑張ることで売上を獲得し拡大していくことも可能な場合も多くあったと思います。ECは新興市場で且つ高い伸び率に支えられてましたので「攻略ノウハウ」「テクニックやツール」といった戦術だけでも一定の成果を得ることができましたが今後はかなり難しくなると考えています。

生き残れる3つのタイプ

強者

ジャンルNo1ショップは売上を落とさない(ミスができない)ことがまず必要な前提になります。固定費の継続的な見直しやDXやAI活用による効率化などで収益率を維持発展しながら新たな成長の機会を伺うことになってくるかと思います。セカンドブランド(D2Cコンセプト系)でポートフォリオを形成していくなどの展開も有効性があるでしょう。

D2Cコンセプト系

オリジナリティあるセレクトショップで別注ロット取り扱いやオリジナル商材開発で顧客インサイト、ペルソナ設定がきっちりはまっているタイプのショップです。セグメントが小さすぎたり実はニーズがないといったミスをせず地道にリピーターを育てていく、顧客とのコミュニケーション性を重視したショップになります。立ち上げから収益化まで時間が掛かりやすい点や理想を優先するあまり運営が非効率になっていないかなどに注意を配りながらも、顧客価値提供がしっかりしている(コンセプトがしっかり立っている)ことで粗利率を高く保ち、出荷数や流通額よりも、リピーターや利益率を重視していくことが基本です。独自性があり軌道に乗っていても代替商品の登場や代替プレーヤー進出により一気にシェアを失うリスクはありますのでトレンド変化や新技術、新素材などの登場には注意をはらう必要があります。

経営熱心

必ずしもすべてのショップを上記2パターンに分けられるものではもちろんありません。既に一定の顧客を獲得していたり、ジャンルの中でも小さなセグメントで認知を取れていたり、特定商品が売れていたり、運営が確立されている(効率や固定費、変動費などが適切な)ことで収益を上げているショップも多数あります。そういった会社は管理会計などを勉強しているケースも多く経営熱心で社長がしっかりしている会社が多い印象もあります。また商品力や価格競争力が必ずしも高くなくてもお客様志向、お客様を大事にする姿勢でカバーしお店として選ばれるよう注力している会社も多い印象です。

WEBマガジン「シンEC」は強者とコンセプトショップしか生き残れないこれからの時代にどうあるべきか、どう勝ち残るのかを考えるWEBメディアです。また出店を検討している方にとっては転ばぬ先の杖となれば幸いです。